リム皿の開発とその経緯
二風谷の伝統工芸品である「二風谷イタ」
丸や四角を形どったお盆の全面に木彫りが施されている美しい工芸品です。
当時、アイヌは日用品としてそのイタをお盆やお皿代わりに使用していましたが、現代では高価なアート作品という位置付けになり、観賞用またはコレクションの一部となってしまいました。
私たちが目指すものづくりには、今まで道具として使ってきたものなのだから、今の暮らしに合う形でまた道具として使えるものを作りたいという考えが根幹にあります。使ってこそ、アイヌの暮らしの真の豊かさが感じられるのではないかと思っているからです。
確かに木彫りが全面に入っていたら、食材をのせることに誰しもが抵抗を抱くはず。ならば、木彫りを一部分に入れて、実用的かつ今までにないお皿を作ることができないか、という思いから生まれたのがこのリム皿です。
私は日常的にワンプレート皿を好んで使います。特に朝ごはんやランチの時など、時間に余裕のない時こそ昨日の残りものをさっと盛り付けるだけで豪華な食事に見えるのがワンプレート皿のいいところ。洗い物も1つで済むから楽ちんです。
もちろん、大皿としてメイン料理やおかずをたっぷりと盛りつけてもいい。お気に入りの器に盛りつけられた様々な料理が並ぶ食卓に、幸せな一時を感じます。
このリム皿は、まさにそんな理想を詰め込んでいます。
ゆとりのある大きなリム(縁)と、料理を囲むようにして彫刻された美しいアイヌ文様。食事をより一層引き立て、木のあたたかみと相まってご飯がとても美味しそうに見えます。
リムの厚さは8mmと厚めに設計し、アイヌのイタや北欧のヴィンテージの木皿のようなおおらかな佇まいと、長く使い込んでいただけるようしっかりとした丈夫な作りを目指しました。
アイヌの木彫りではよく見られる植物のツルやつぼみ、花などを連想させる文様。そこに二風谷で代々受け継がれてきた、魚の鱗を模したラムラムノカという木彫りを取り入れました。さらに、このリム皿の輪郭を強調するように縁取られた木彫りは、お皿に存在感を与え、グリップ力を上げ持ちやすさも兼ねています。
※ラムラムノカの「ム」は小文字。
汁気の強いものはシミができやすいため、気になる方は初めはパンや焼き菓子などの乾いた食材でご使用ください。徐々に馴染んできたら、木は油との相性もいいので、オリーブオイルをたっぷりかけたサラダやペペロンチーノなどオイル系の料理もおすすめです。
使っていくうちに傷やシミができてきますが、木の色や表情が変化していく様子もお楽しみください。時を経て、唯一無二のあなただけの味のあるお皿に変化していきます。
リムの部分にアイヌ文様の木彫りを施した、今までにないお皿。
時々オイルメンテナンスをして、経年変化を楽しみながら、アイヌ工芸がある暮らしを楽しんでいただければと思います。